2010年9月25日土曜日

発見!消失! 渋谷駅周辺のパブリックアート【2/2】

2010 年 9 月 25 日
Posted by 松本紋 /アートコーディネーター

後編【消失編】

今回は渋谷の喧騒にいつの間にか消えて行ってしまったパブリックアート作品についてです。

皆さんご存知、渋谷QFRONT。渋谷駅から出て、スクランブル交差点をわたった所にある、ビックスクリーンが目印の渋谷駅周辺のシンボル的ビルの一つです。

1999年にできたこのビルの「Q’s Wall-C」と呼ばれるセンター街側のスクリーンに、かつて世界的に著名なアメリカ人現代アーティスト、ジョナサン・ボロフスキー氏の作品が3年ほど展示されていた事をご存知でしょうか。ボロフスキー氏の作品とは人の形をした巨大な彫刻作品が特徴的であり、彼の作品は世界中で見る事ができます。例えば北京のオリンピック公園やトロントのピアソン国際空港などです。日本では、東京オペラシティー内、B1Fのサンクンガーデンにそびえ立つ彫刻「Singing Man」が有名ではないでしょうか。

「Heartlight Man」というその作品は、高さが41m、横幅 11.6mの人の形をした平面作品で、アーティストの心臓の鼓動を録音し、その鼓動の音とそれにあわせ全身の光が点滅するというものでした。

しかし、当時学校帰りに毎日QFRONT前を通り過ぎていたにもかかわらず、私にはこの作品の記憶がありません。中学生だった私にとっては、日本に上陸したばかりであったQFRONT内のスターバックスのコーヒーと友達とのおしゃべりの方が重要だったようです。

さて、この作品の事を人伝てに聞き、なくなってしまった理由を調べてみると、ビルの竣工にあわせて1999年よりQ’s Wall-Cでアート作品を継続的に展示して行く企画、「コンテンポラリー・アート・ショーケース」のスタートを飾る作品として、1999年より継続的に展示替えをされる事を前提に発表された作品であるとの事が判明。企画の2回目以降が実現されなかった理由は判明しませんでしたが、継続的に文化活動を続けて行く事の難しさをぼんやりと実感。。。

ちなみに、今のQ’s Wall-Cには広告が展示してあります。ボロフスキー氏の作品が撤去された2002年以降はQ’s Wall-Cは屋外広告の媒体として利用されているとの事です。

ボロフスキー氏は「Heartlight Man」作品についての自身のコメントで、「渋谷エリアの喧騒は、作品の一部である私の心臓の鼓動をかき消してしまう。」とコメントをされていました。巨大なアート作品ですら、かき消してしまう渋谷の喧騒。それもこの企画がなくなってしまった理由の一つかもしれません。

設置される"場所(プレイス)"と共存する事を目的として創られる、パブリックアート。次回渋谷に行かれる際には、街の喧騒と共存する作品達を探してみるのはいかがですか?



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